評判のよいGRモーターオイルを試してみる
ここ数年、エンジンオイルはSUNOCOのSveltシリーズを愛用していましたが、GRモーターオイルの評判が良いのでちょっと試したくなりました。
GRモーターオイルのCircuit 0W-16、0W-20は低粘度でありながらサーキット走行を対象にしているという、従来の考え方ではなかったオイルになっています。
いずれの粘度のオイルもかなりシャバシャバで柔らかいという話をきいていて、面白そうだなとおもい、インプレッサG4に入れてみることにしました。
目次
GRモーターオイルとは
TOYOTA GAZOO Racingが、「あらゆる道で極限に挑み続ける中で得られたノウハウを惜しみなく注ぎ込んだ、トヨタ純正GRモーターオイル」とのことです。
ラインアップは以下の通りです。
Circuit
・0W-16
・0W-20
Endurance
・0W-20
Touring
・0W-30
・5W-40
CircuitとTouringが低粘度ベースオイル・低フリクション添加剤によるスーパー・ハイレスポス指向で、Enduranceがノンポリマー処方・特殊エステルベースオイル・低フリクション添加剤による高耐久性&リニアリティ指向とのことです。
詳しくはGRモーターオイルのサイトを参照してください。
GRモーターオイル
いつも使用しているオイルと同じような粘度のTouringの0W-30を選択してみました。
粘度、動粘度、粘度指数、HTHS粘度
エンジンオイルの粘度の表記は0Wー30といった感じで、Wの前の数字が低温時の粘度、右側の数字が高温時の粘度を表しています。
Wのほうは冬場など極寒時の指標にされ、10Wはマイナス25度の環境に、0Wはマイナス35度の環境に適応することを示しているようです。
日本だと10Wでほとんど対応できると思うので、高温側の数字が車両にあったものを選べばよいと思います。
W側の数字が小さいほど粘度が柔らかいので、エンジンが冷えているときに抵抗が少ないので燃費が良いという点はあると思います。
次に動粘度という指標があります。これは40℃の時(40℃動粘度)と100℃の時(100℃動粘度)のオイルの流れやすさを数値にしたもので、数値が大きいほど粘りがあるオイルになります。粘度は目安にしかならないので、実際にオイルが柔らかいか硬いかはこの動粘度の数値を見ることによってわかります。
他の指標として、粘度指数というものがあります。今回、調べるまで当方はあまり理解していませんでしたが、この粘度指数が大きいほど、オイルの温度が上がった際の粘度低下が少ないようです。
最後の指標としてHTHS粘度というものがあります。これは高温高せん断状況下において低下した状態での粘度ということで、油温150℃の時に金属同士を押し付けて回転させた過酷な状況の中でのオイルの粘度を表しているようです。
この値が大きいほど、エンジンオイルは高負荷に耐え、金属の摩耗量が少なくて済むということになります。
いつも使っているSUNOCOのSveltとGRモーターオイルの動粘度、粘度指数、HTHS粘度を表にしてみました。
GRモーターオイルのCircuit 0W-20とTouring 0W-30の粘度指数が300オーバーで飛びぬけて大きい数字ということがわかります。
Touring 0W-30は40℃の時だと、Svelt 0W-20よりも粘度が低いことがわかります。
オイルの粘度計算のExcelツールを公開している会社があったので、利用させていただき、0℃、80℃、120℃の値を追加してみました。
ツールは日本フローコントロール株式会社のHPからダウンロードできます。
粘度計算
以下の表を見ると、GRのTouring 0W-30の方が、Svelt 0W-20よりも気温0℃のときの粘度が低いことがわかります。エンジンが軽いとかレスポンスが良いと評判なのは低温時の粘度が低いことが効いているのでしょう。
逆に低温時はSvelt 5W-30より断然柔らかいGRのTouring 0W-30は、120℃時点ではSvelt5W-30より粘度が高くなっています。
粘度指数が大きく、温度が上がっても粘度低下が低いことからこういった逆転現象が起きています。
上記表をグラフにすると以下のようになります。
100℃以下が密集してわかりにくいので、0℃と40℃を対象外にするとこんな感じです。
温度が上がるにつれ、粘度が逆転しているところがあります。
こんな感じで指標をいろいろ見ていくと、車両の利用状況や油温の状況を把握し、適切なHTHS粘度や動粘度(100℃)に合わせて、出来るだけ動粘度(40℃)が低いものを選ぶのが耐摩耗性を確保しつつ、低温時の抵抗が少なく、燃費が良かったり、エンジン内の潤滑が早く得られて良いのではないかと思いました。
粘度比較実験(GRモーターオイル、SUNOCO)
動粘度などカタログスペックからだいたいどんな感じかわかりますが、実際にどれくらい違うのか試してみます。
いつも使用しているSUNOCOのSveltと比較し、今後どれを使うかの参考にしたいと思います。
左から以下の順番です。
・SUNOCO Svelt 0W-20
・SUNOCO Svelt 5W-30
・GRモーターオイル Touring 0W-30
色は似たような感じですね。
まずは常温での計測です。22度ほどでした。
45度の傾斜の板に垂らしていきます。
スタート。
早くもGRが一歩リード。
動粘度(40℃)が一番柔らかいだけあって、GRの流れが速いです。
GR一着です。
Svelt対決は動粘度どおり0W-20の方ですね。
数字以上に差があるように感じました。
冬場のエンジン始動時だとかなりの差が感じられるんじゃないかと思います。
GRのエンジンの回転が軽いというのはこの低粘度にあるのでしょう。
続いて高温側を確認します。
お湯でオイルを温めます。
すぐに冷えてしまうのか73℃前後での確認になりました。
板は常温なので、垂れて流れるにつれ、温度がさがってしまうので、垂らした直後を比較するのがよさそうです。
スタートです。
斜めに垂らしてしまったのでGR側が早い感じになってしまいました。
Sveltの0W-20はスタートで遅れましたが5W-30に追いつきました。
結果はGRが一番速かったです。
70℃であればGRの方が動粘度が小さいので、カタログスペック通りといった感じでしょうか。
120℃であれば、GRのTouring 0W-30が一番固くなるので、使用状況で油温が何度位かを把握して、その温度での動粘度がどれくらいかでエンジンオイルを選んでもよいかもしれません。
街乗りで120℃はまず行かないと思うので、90℃くらいの動粘度を計算してみて比較するのも面白いかもしれません。
高温時比較実験(GRモーターオイル、SUNOCO)
一度やってみたかったオイルを熱しての比較実験をやってみました。
Touring 0W-30とSvelt 5W-30で比較実験をしてみます。
100円ショップで実験にちょうど良さげなステンレスプレートが売っていたので購入してきました。これだけのためにキャンプ用のコンパクトバーナーを買いました(笑)
着火です。
昼間だと火の色が見えないので火が点いているかどうかは音で判断します。
あっという間に200℃
オイルパンのエンジンオイルの油温が130℃以上の高温時に、ピストンリング部分やタービンの軸受けの部分が200℃近くまで上がるんじゃないかと思います。
※実際に測ったわけではなく、ネットの情報なので間違っている可能性有り
しばらくすると煙がでて色が変色し始めました。
280℃くらいで熱し続けているとTouring 0W-30の方の色がだいぶ濃くなりました。
Sveltは煙はでますが、色はあまり変わらなかったです。
実際にここまで高温になることは無いのですが、300℃近くで熱した結果、以下のようになりました。
両者かなり色が濃くなりましたが、GRのほうが顕著ですね。
340℃を超えていました。
冷ましたあとの粘度変化を確認します。
粘度は保たれているようです。
GRの方が若干粘度が上がった感じはします。340℃なのでしょうがないですね。
粘度指数が高い分、ポリマーを多く配合しているので、ポリマー成分が劣化してしまうのかなと思いました。SUNOCOのBRILLはノンポリマーを謳っていますが、SveltはHPを見てもノンポリマーとは記載がありませんでした。ポリマー配合は少ないのかもしれません。
340℃近くまで上がっても粘度変化はかなり抑えられているのかなと思いました。
番外編です。
一番最初に比較実験をしたときに温度調整をしなかったので300℃を超えて加熱しつづけてしまいました。
エンジンオイルに引火。
オイルも300℃を超えると気化して引火するようです。
えらい勢いで燃え出して焦りました。
ガスを止め、濡れ雑巾を上から被せて消火しました。
スラッジ化し、煤が付きまくりました。
スラッジ化するのはポリマーのようなので、粘度指数の高いGRはポリマーが多いのかなと思いました。
こんなにオイルが燃えることは無いので気にしなくていいと思いますが、構造上エンジンオイルが燃えるロータリーエンジンや数千キロでオイルが1Lくらい減る欧州車などにはあまり使用しない方が良いのかなとも思った次第です。
ノンポリマーを謳っているEnduranceがどうなるか試してみたいところです。
逆にSveltのスラッジ化が少ないのが驚きでした。
まとめ
比較実験をしつつ、インプレッサG4のオイル交換でTouring 0W-30を入れてみました。
注ぐときにじょうごにたまらず吸い込まれていくのでやはり粘度は低いなと感じました。
エンジン始動し、暖気もそこそこに走り出しましたが、評判通りエンジンの回りが軽かったです。SUNOCOのSvelt 0W-20より柔らかいんだからそりゃそうだろうなと思いました。
ネットでは油温が下がったという声も上がっていました。
暖気も完全に終わり、水温が90℃前後で安定している状況で油温はいままでより低いかなと感じました。
気温が一気に下がった日だったので、どれくらい影響しているかわかりませんが、水温より油温が低い状態が多かったです。
郊外の渋滞の少ない街乗りだと水温より油温が低かったです。
あまり交換前の油温の状況を覚えていませんが、90℃以上にはなっていたように思えます。
抵抗が少なく、エンジン内をくまなく潤滑するので、冷却性能も高いということかもしれません。
いままで0W-20とか5W-30という表記でしか粘度を見ていませんでしたが、粘度指数やHTHS粘度を見ると、違った視点でエンジンオイルを考えられるなと思いました。
高温側の動粘度と求めるHTHS粘度をもとに、低温側が出来るだけ柔らかいオイルを選ぶのが燃費や耐摩耗性などでもよいのではないかと思いました。
あとは価格ですね・・・
SUNOCOのSveltはペール缶で買うとリッター1000円程度なので、お気に入りです。